永年勤続制度を活用し、ジャングルウルトラマラソンへ

永年勤続制度を活用し、ジャングルウルトラマラソンへ
 ネオス株式会社には10年間勤続した社員に向けて、10万円分の旅行券と5日間の休暇を与える永年勤続制度があります。その使い方は様々ですが、特にユニークだったのはコンシューマ&コンテンツ事業部統括部長のK.H。5日間の休暇に加え6日間の有給を取得。2週間の長期休暇を利用して、先日ペルーで行われたジャングルウルトラマラソンに出場し、総合4位という快挙を成し遂げました。「自分は走り続けるために仕事とプライベートの境をなくした。」と話すK.Hは、この10年間で自分をマネジメントする力を手にしていました。

K.H
ネオス株式会社 コンシューマ&コンテンツ事業部 統括部長  大手SI会社でヘルスケア領域のアライアンス事業を手がけたのち、生活習慣病の方向けの弁当宅配会社を起業。その後2008年にネオスに入社、コンシューマ&コンテンツ事業部統括部長としてヘルスケア事業のプロジェクトを牽引する。

ジャングルウルトラマラソンの面白さ。

―先日出場されたジャングルウルトラマラソンの結果は、いかがでしたか?

 初めて自分のリミッターを外して挑んだ大会となりました。今回のジャングルウルトラマラソンは、ペルーのアマゾンジャングル上流域で5日間に渡り開催されました。標高3000mほどの環境下で、トータル走行距離は230km。その中には山の登り下りや、川を歩いて横断するコースも含まれています。危険な獣や虫、感染症のリスクも考えられるため、予防接種には10万円近くもかかりました。

 自然相手のためあらゆることが行ってみないとわからない、という状況の下行われたレースは、本当にトラブルの連続でした。初日は高山病で倒れ、降り続いた雨による低体温症のリスクも感じていました。目印が見つけられずコースを見失うこともあれば、ぬかるんだ道を下山中、何度も滑り転ぶ場面も。夜は極寒の中ハンモックで過ごし、日を遮る物が無い川沿いのコースでは猛暑に苦しみました。そんななか、日本人初の完走を目標としていましたが、予想に反して初日を除いた2日目以降は全体のうち5番6番でゴールすることができ、もしかしたら総合入賞も目指せるんじゃないかという気持ちが生まれてきました。

 そして迎えた最終日。前日の夜から、これが最後のレースになっても良いから限界まで挑戦しようと覚悟を決めていました。こんな体験は初めてです。いつもなら5番手ならそのまま前について決して無理をしないレースを心がけますが、今回は自分の限界を超えてでも自分に勝ちたいと強く思いました。

 その結果、トップを走る選手たちが離脱していく中で順位を上げ1位でゴール。最終日に一緒になったプロアドベンチャーランナーの北田さんと、日の丸を掲げ一緒にゴールすることが出来ました。

―ゴールした時は、どんな気持ちでしたか?

 信じられない。本当に信じられないという気持ちで胸がいっぱいでした。その瞬間、今まで見ていた世界が変わったように思えました。とにかく、意識を変えて走って良かった。これまでに感じたことのない、達成感に包まれました。

 過酷なレースを乗り越えていく過程で、周りの人達が私たちに向ける目も明らかに変化していると感じました。最終日には日本人2人でゴールを目指す姿を見て、「君たちがナンバーワンだ!」と声をかけてくれる外国人の方もいました。自分の意識も見ている景色も180°変わったように思いました。

 

フルマラソンとマネジメント。

 

―そもそも、走り始めたきっかけは何だったんですか?

 元々は根っからの仕事人間で、夜遅くまで働き深夜2時からでもお酒を飲むという生活を送っていました。自分のやっている仕事が好きでしたし、思い入れがあるからこそ他の人に仕事を任せることが出来なかった。職場と居酒屋を往復するような毎日で、体重は増え疲労感は抜けない、今考えると健康な状態とは言えないものでした。

 そんな私が、大阪マラソンのメインスポンサーの企業様の仕事に関わらせていた関係で、ひょんなとことから大阪マラソンに出場することになったのが2013年。大会の2ヶ月前からトレーニングを始めて、人生初のフルマラソンに参加することになりました。走り終えてみると、想像以上にタイムが良かった。これは、もうちょっといけるんじゃないかと思いました。フルマラソンが完走出来たなら、次は100kmを目指そうと、すぐにその翌年のサロマ湖100kmウルトラマラソンにエントリーしました。その大会も制限タイムぎりぎりで走り切ることができ、この次は何だろうと探したらサハラ砂漠マラソンというサハラ砂漠で7日間、約230km~250kmを走るマラソンを見つけました。

 翌年はちょうど30回記念の年で応募が殺到しており参加が出来ませんでしたが、その次の2016年に無事出場することが出来ました。実はこの時にも有給休暇を取得し、会社を2週間休んでいます。ネオスで行われた幹部合宿で、自分がサハラ砂漠を走る理由をプレゼンしたのを覚えています。

―サハラ砂漠マラソン出場後は、どのような変化がありましたか?

 この時結果は残せなかったのですが、だからこそ本格的に練習が出来る環境を作るにはどうしたらいいのだろうと考えるきっかけになりました。また、サハラ砂漠マラソンを通じて出会った人々にも強い影響を受けました。そこには常識に囚われていない方が大勢いて、自分のようなサラリーマンは少数派でした。経済的に自立していながらも旅人のように生きている彼らと過ごした時間が、とても心地良かった。それまで自分の視野・視点は仕事にだけ向いていましたが、色々な背景の人と話すことでものの見方が豊かになっていくのを感じました。

 その体験がきっかけで、サブスリー塾というオンライン上のランニング塾を立ち上げました。プロランナーの方とランニングクラブと共同で、事業化に至りました。現在は一時撤退中ですが、サブスリーを目指す方の指導を行い、学びながら同じ目標に向かって挑むコミュニティとして機能していました。そこに集まった塾生の中には大企業の幹部クラスの方が多かったこともあり、今でも一緒に仕事をする機会をいただいています。

 フルマラソンを走らない方は少し想像がしにくいかもしれませんが、42.195kmを3時間以内で走るには自分自身をマネジメントすることがとても重要になります。大会までの3ヶ月間、練習メニュー通りにしっかり練習ができずに、翌週にもリカバリーできない週が2回以上あると、よい結果はほぼ望めなくなります。フルマラソンに必要なものは運動能力よりも計画をきちんとこなすマネジメント能力の方。そのくらいスケジュール管理を徹底しないと、3時間を切るだけの心身の状態を作ることは出来ません。この事業を立ち上げたからには私も同じメニューをこなしサブスリーを目指そうと練習を始めましたが、仕事がある中でどうやって時間を確保していくか、予定通りにこなせない時にはどう再調整するかの繰り返しで、身をもって自分をマネジメント管理する難しさを学びました。

 ネオスに入社して10年。自らのことを飽き性だと表現するK.Hは、ここまで続けられたことに自分でも驚いている様子でした。その背景には、マラソンとの出会いが大きく作用しているように感じられますが、K.Hほど仕事と結びつけている者は社内でも稀な存在です。インタビュー中に語られた、続けるために重要な役割を担うコミュニティの存在と、結果を出すために必要なマネジメントの力は、ネオスにとっても新しい働き方を考えるヒントとなるかもしれません。

 

連動する仕事と趣味。

 

―仕事とプライベートについては、どのように考えていますか?

 私は、仕事とプライベートを切り離して考えていません。走りながら仕事のことを考えるのはしょっちゅうですし、この区間であの課題を解消しようと決めて走ることもあります。今私に求められている役割は、より多くの人にヘルスケアを取り入れてもらうために私たちは何をすべきか、というプロジェクトの根幹を考えることです。抱えている業務の半分は通信環境さえ整っていればどこでも出来るので、その分時間を上手く使い、双方がより良い方向へ進むよう行動することを意識しています。

―K.Hさんが所属しているヘルスケアの部署は、同じように運動している方が多いですか?

 他の部署に比べて圧倒的に多いと思います。自分たちの開発した歩数計アプリを使ってチームごとに歩数を競い合ったり、ランニング部としてマラソン大会に出場することもあります。担当しているプロジェクトに関わらず交流の場が持てるので、部署内のコミュニケーションの活性化に繋がっていると感じます。私たちが開発したウォーキングアプリをご利用いただいている企業の方にも、同様に社員同士が会話をするきっかけに繋がったと言われることが多くあります。

―ITとヘルスケアの結びつきには、どのような可能性があると考えていますか?

 運動も食事制限も続ければ、結果が出ることはわかっています。問題は、どのようにしてより多くの人に楽しみながら続けていただけるか。モチベーションを提供し続けるという点で、ITの技術が活かせる場面は大いにあると思います。

 ただ、私たちが考えるべきはITをどう活用するかではなく、健康に目を向ける人をどのように増やしどんなサポートをするかです。IT化が目的になれば、ヘルスケアの本質を見失います。ヘルスケアはITがない頃から存在する習慣であり、ITが無くても行うことが出来る。そのことを理解した上で、IT技術を最大限生かしたサービスを考える必要があると思っています。

―運動を続けられる人と、続けられない人の差はどのようにして生まれると思いますか?

 続けられる人、続けられない人いろんな方がいますが、大事なのはモチベーションをどう保つかです。そしてそれは、コミュニティが果たす役割と深く関係していると思います。サブスリー塾も、コミュニティとそこで得られるエンゲージメントを元に考えられたサービスでした。

 会社の離職率と同じで関係性が希薄になれば、それは他へ移る動機になり得ます。会社と社員、自分とメンバーの間でもお互いに提供するものによって、得られるモチベーションは異なります。そのため、一緒に学び合ってその結びつきを高められる環境を作ることが重要だと思います。

―最後に、今後の抱負などがあればお聞かせください。

 私はとにかく、自分が見たことない経験したことがないことをやりたいと思っています。50歳を境に、若くして亡くなる人も多いと感じてからはさらにその思いが強くなりました。やり残したことはないか、やりたいと思ったのに出来ていないことはないか、常に自分に問いながら刹那に生きたいと思っています。自分にとって未知なことはまだまだ沢山ある。だからこそ、時間を作り続けるための環境を作る工夫をするんだと思います。

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